ニュージーランド日記① 2月19日(水)

不意に、ニュージーランドに行くことにしたのだった。

何かが見たいとか、どこかに行ってみたいとか、そういった希望はない。そういう類の希望をもつことは、ふだんからあまりない。

 

実際のところ、例えばマイルの失効期限だとか、有給の残数だとか、夏が恋しいとか、南半球初挑戦とか、友人に会うためにだとか、によって行くことにしたのだが、だからと言ってニュージーランドである必要はなかった。心の赴くままに、いつもいるので。それで。それで大抵のことは説明できてしまうし、最も肩に力が入らない説明であるように思うし、心の赴くので、へえ、と。あ、うん、と。ツー、カー、と。何にもならないそれ、これ、でいいのではないかと思う。

 

何にもならないを繰り返さないと、何か塊が生ずることがない者もいる。

 

さて、ここ空港には「待つ人」がたくさんいる。そして待つためのスペースがたくさんある。待つためのスペースで待つ人を見ながら待つのは、かなりいい感じだ。待つための座面の広い椅子、空腹の待つ人に合わせて売られる、待っているとき用のソフトクリームやホットドッグ。プラグ。待つ子供たちが走るのにちょうど良い広い通路。これでは、いつまででも待っていたくなる。待つ時用に電子書籍には石牟礼道子随筆と、The Catcher in the Rye原文(翻訳も実は読んだことがない。どんなかな?)を入れてきた。待つべくして待つ。本や食は最終手段に構えているものとして、待つをただ純粋にたのしんでいる。こういうことだけをしていたい。こういうときにだけ、何か浮き彫りになる。

 

待ち時間が終わりを告げそうなキャビンアテンダントの動向。待ち時間が終わってしまうと思うと途端に不安に。

飛行機に8時間も乗れば、シドニーに着く。