4月1日~9日 とじたレコード

とにかく横になってばかりいる。ハンモックの上で。ハンモックの上で、Uの字になり続けている。なにかの音がながれているときもあるし、眠り界にいるときもあるし、眠り用のくつしたをはいているときもあるし、素足をするする言わせているときもあるし、缶ビールものんでいる。なにもしない時間が一定過ぎると、ごろりメロディーが出てくることが多く、目覚めてすぐによく知らないメロディーをくちずさんでいる。でもなにか形にしようと横着をすると、跡形もなく消えてしまうことを、いまは知っている。


いつかの朝、クリームパン。

いつかの昼、立ち食い蕎麦屋でかけそば。

いつかの夜、とても高い牛肉を焼いたもの、残っていた新もずく、缶ビール。


簡単に、ふつうに、無意識に、侵略というのは、行われるなあ、と思って、勝手にばたばた藻掻いているメッセージを眺める。とにかくとじるといいよ、とじられないなら、できれば話したり会ったりしないほうがいいし、とじてながめて、ひとりで息を吸っていればいいのにな、と興味深く眺める。興味深く眺める、とこんな具合でわざとらしく書いていないと、ふつうに、乱れてしまう。わたしは逃げる。

悲しいような、むかつくような、ないまぜのよくわからなさで、よく知らないメロディーをくちずさんだりしながら、何とか。


春はたしかにそこにあって、桃や木蓮は咲いて散って藤やツツジが咲きだして、いつもよりだれにも見られないしずかな季節に、変わらず鼻の奥が反応し、Uの字でぐったりしている。