1月20日(日) 駒場東大前に向かう

わたしは遅刻していて、目覚めたら出掛ける時刻を30分も過ぎていたから。お風呂場からぴしゃぴしゃと水の音がしていて、ああ、またシャワーの蛇口の閉めるのが弱かった、と思ってねむいねむい重いからだを引きずって、婆のように止めに行く。いつもが多少閉め忘れた程度なのに、今日はほとんど出しっ放しだった。さして反省もしないままもとの部屋に戻る。さっきの婆が90だとしたら、75の婆くらいまでねむけが覚めて、頭をあげると、襖に掛けてあったイヤリングが部屋着のポンチョに引っかかってしまっている。でもちょうど耳のところに引っかかっているから、首をすくめて耳との距離を埋めるとなんか可愛い、でも外す。ポンチョは部屋があんまりにも寒いと言ったら、実家から母が贈ってくれたタータンチェックの、あたたかなポンチョ。わたしの借りている家には、日がささない。くらくて、しずかで、お婆ちゃんの家みたいな家だと思っている。

 

出掛ける準備をした記憶はまるでないけど、気がつくと最寄駅から電車に乗っていた。なんか鉄橋を渡っている。となりに恋人がすわっていて、あ、荒川、とつぶやく。えっ、とギョッとする車窓には、mac book airが逆さ向きに立てかけられていて、なんでケースに入ってないんだろうと訝しんだ。その訝しみをこめて、なんで荒川なの? ときくと、荒川だよ、とやさしくこたえてくれた。わたしの家の最寄駅は地下鉄しか通っていないことに気がついている。

 

電車を降りた記憶はないけど、気がつくとバスが高速道路を走っていて、運転手の背中が丸く、何かに追い詰められてる感じ。焦ってるなあ、なんか、と思いながら、目的地に向かっている。よく分からん光が3つ、フロントガラスを横切る。自転車かな? と思って運転手を見ていると、こっちがバスだと思ってあんな無茶をする、とひとりごちた。わたしと運転手以外に、光に気がついた人はいないように見えた。

 

これから起きることを夢に見る。これから起きること。これから起きること。夢を。夢に。

 

と書いていると、出掛ける時刻を30分も過ぎている。