6月の東京 is the poet.

雨が降って、街は、道は、濡れていた。紫陽花は濃い青を湛えて、溢れんばかりにしている。猫は中にいる。フランス人の老夫婦は道に迷っていた。教会はどこか? ——下に降りる。それで右に曲がって、また坂を登る。——そんなはずはない。青い橋が見えない。青い橋が見えるはずだ。——青い橋なら、その緑を越えたら見えると思う。——知らない街の知らない青い橋が見える、雨のネ、ネとコドー。ゴドーは来ない。ネとコドー。

 

6月18日(火)

代官山へ。晴れたら空に豆まいてにて、ASA-CHANG&巡礼といとうせいこうを。アウフヘーベンという名前の場所。アウフヘーベンとは。高揚。つぎねぷと言ってみた、花、まほう、影のないヒト、連鎖するコラージュなど。言葉が連呼されて、どうなるってそれは、大変なことになった。わたしが。涙が。なみだは。なみだ、糸でつないだら、真珠の首飾りに。この世に留めるのも不粋だと眺めていたら消えてしまった。いとうせいこうは紋付袴をはいて、チラシをまいていた。いくつもの言葉は宙をまった。わたしはそれに触れるのだ。どうしても触れるのだ。過去が肌を撫でる。うまれてはじめて水に入るみたいな、恐ろしく、なつかしい気持ちである。猫は中にいる。

 

6月22日(土)

青山CAYにて、町田康朗読といとうせいこう is the poetを。石牟礼道子太宰治中島らもの朗読など。知らぬ間に高揚。涙。dubはいつまでも続き、なんどもなんども帰ってきて、そのたびに消えてしまう。軌道はすべて異なり、帰ってくるたびにちがう涙が出る。過去に響いた(であろう)音がいま、音になり、触れては離し、話してはハナシテハ触れて、りんっ、と、はじけた。ああ。夜の闇にはおそろしい三日月が掛かっているので、わたしはどうしても取ってしまう。と。音と鼓動。外に出て行った。のは。